研究方針

研究課題
1.生物活性化合物の合成
2.酵素触媒不斉合成法の開発
3.同位体標識法の開発と生命現象解明への応用
4.Pickering エマルションを反応場とする触媒反応の開発
5.創薬や医療に資する新規機能性分子の精密有機合成

 医薬品の殆どは有機化合物である。また、生命現象は大小様々な有機化合物が関与する化学反応から成り立っている。生命現象を分子レベルで考察し、そこから新しい医薬品候補化合物を創製する過程に於いて、有機化合物を扱う「有機化学」の果たす役割は実に大きい。
 我々は、有機化学を基盤として、新薬候補化合物や、創薬・医療に役立つ高機能性有機化合物の創出を目指して研究を行っている。医薬品の構造が複雑化してきた今日、標的となる化合物の効率的合成のためには新しい概念による合成法や技術、触媒の創生が不可欠である。また、原料となる資源の有効利用、副成物による環境問題、さらには、鏡像異性体の選択的不斉合成法など、未解決の課題に我々の英知を結集し、独自の解決策を創造することにも注力している。
 具体的には、特異な化学構造と顕著な生物活性を有するallocolchicine, aloin, rubioncolin Bなどの全合成とそれらの誘導体の創製研究を行っている。そのために、「典型元素」、「遷移金属」、「酵素」、「バイオマス」などの特性を活かし、また潜在能力を引き出し、更にこれらを融合した新しい合成手法を開発している。例えば、「加水分解酵素リパーゼと固定化金属触媒を組み合わせた不斉合成法」、「C-D結合はC-H結合より安定であるという同位体効果を利用した生物活性化合物の重水素標識化法の開発と生命現象解明への応用」、「芳香族化合物への位置選択的フッ素導入法」、「高反応活性なベンザインの反応性制御による多置換縮環芳香族化合物の合成法」、「Pickeringエマルションを反応場とする連続触媒反応の創生と医薬品骨格分子群の合成」、「最先端の計算手法を活用する反応解析や反応設計」などに関する研究を行っている。これらの研究成果で特許を取得し、国際的な専門誌に成果発表を行い、世界的に高い評価を得ている。さらに、我々が合成した新規な医薬品候補化合物、独自の触媒や合成手法などを新薬候補分子の創出、医農薬の効率的製造、革新的医療に繋げるべく、産官学の研究グループとの共同研究を積極的に行っている。
 赤井周司教授、澤間善成准教授、鹿又喬平助教は、それぞれ異なるバックグランドと得意分野を持っている。各々の知識と経験を活かし、融合し、学生と共に種々の研究課題について日夜研究に励んでいる。